ドラゴンは咀嚼した後、肉塊を吐き出した。ここで俺の感情をを抑えていたスキルをすり抜ける感情が芽生えた。猛烈な怒りだ。

 俺はドラゴンに向かって超加速を使って駆け出した。まだ破壊属性が使えるギリギリの時間だ。剣圧に破壊属性を付与して斬撃波として飛ばす。

「死ね!死ね!死ね!」

剣圧が貯まるたびに破壊属性を付与して飛ばすが全くダメージが入らない。もうすぐ破壊属性付与ができる時間が限界を迎えるそうなったらゲームオーバーだ。

 ドラゴンが尻尾で反撃をしてきた。ぞのまま俺は叩き飛ばされた。だが俺には、体力自動回復 (極大)がある。時間をかければまだ戦える。だが時間を掛けると破壊属性付与の時間が切れる。俺は出血して肺にたまった血を臓器操作で無理やり押し出した。

「マスター! ご無事ですか!」

 家の残骸に埋もれていたディーネがカインさんに担がれて這い出てきた。生きていたかよかった。

「おい、エルビス……なんで帰ってきた。そのまま逃げればよかっただろ」

「そんな訳にもいかないでしょ」

「カインさんまだ戦えますか?」

「当たり前よ。あのドラゴンを倒して、そこのクソガキをぶっ殺す」

カインさんの視線の先にはべフィスがいた。カインさんは、ディーネを安全な場所に置いてこちらに来た。

「時間的に最後の破壊属性攻撃をします。その後に攻撃をかまして下さい」

「わかった。任せろ」

『光、龍魔法:シャイニングレーザー(破壊属性付与)』

宙に浮いた龍から極大の光線が吐き出された。

「GYAOOOOOOOOOOO」

ドラゴンの体が少しずつ崩れていく光龍が光線を出し終わる頃にはドラゴンの姿は完全に消滅していた。

「ハハハ、やったなエルビス意外と簡単だったぜ。俺なんもしてねぇよ。後はそこのクソガキだけだ」

べフィスに近づいていくカインさんに巨大な火球が十方向以上から跳んできて直撃した。俺は、吹き飛んだカインさんのもとに走る。

「カインさん! 大丈夫ですか。今回復させます」

俺がカインさんのもとに走るとカインさんは既に息絶えていた。俺はカインさんを殺した犯人を特定するため周囲を見た。そこには11体のドラゴンがいた……

ドラゴン達の口に火が充填され始めた。ここで死ぬのか……

「止めるんだ! そいつには話がある。」

 どこかで聞いたことがある声がする。失踪中と言われていたベフィスとローブを被った男の二人組だ。

「やあ。久しぶり! どうだい。この圧倒的な力。シルヴィはどこだい? 僕の力を見せて今度こそ結婚するんだ!」

「少し黙れベフィス、お前は所詮実験台だ、別にこの村を襲うのはお前でなくてもよかったんだ。それ以上妨害するなら殺すぞ!」

 黒ローブの男に脅され黙るベフィス。

「まぁいい。そこの精霊以外だと最後の生き残りのようだしな。せっかくだ。この黒錬金術製のドラゴンについて説明してあげよう。」

 驚きの余り声が出ない黒魔種の正体が黒錬金術だと……

「そんなはずないだろ……じゃあ結界の中に湧き出ていた黒魔種は全部手作りだというのか?」

「黒魔種? ああ、黒錬金術の過程で生まれる強個体の事か……いいねその名称貰うね。」

 そう言って豪華な手帳に黒魔種と書き綴る黒ローブ。

「さて説明してあげよう! 哀れに死ぬだけの君にそうだな。まず黒錬金術がどういう物なのかと言うところからだ」

 くつくつと笑いながら説明してくる黒ローブ、こちらとしては都合がいい破壊属性を使えなくなった今、体を回復させるには最高の時間だ。

「黒錬金術は白錬金術の反対とか言われているが本質はどちらも同じ、自然の力の利用さ、ただ白と違って黒は魔術を使って無理やり自然の力を捻じ曲げて使うんだ! だから効果が違う! 圧倒的な力を持った効果を生み出す。そしてその代償がこれさ」

 そう言ってドラゴンを指さす。

「不自然に捻じ曲げた力の反発は魔物の発生に影響したそれが君の言う黒魔種だ、君は黒魔種と戦っていただろ? 気が付かなかったか? すべての個体がありえないくらい頑丈なわけではない。君が未来身の鏡を使った日、不自然に大きい黒魔種が出てきたはずだ。」

「それは、黒錬金術で作られた鏡が君たちの姿を未来の姿に、端的に言えば大きくしたからだ。作った錬金道具の効果を黒魔種も引き継ぐ、そしてこのドラゴンは最高傑作だ! 知っているか? スキルは一度だけ進化できるんだ。めったにない特殊例だが確かに存在する。」

 そういって男はブローチをひらひらと俺に見せる。

「このブローチには攻撃力の最上、攻撃力強化(特大)と防御力の最上級、防御強化(特大)が入っている。スキルには上中下しかないと言われているがもう一段上があるんだ!」

 そう言ってドラゴンをポンポンと叩く

「こいつもそのスキルを持っている」

 スキルだけ聞くとオレのはるか下位互換だ。だが黒魔種というだけで本来の3倍のスペックはあるはずだ。それにあんなスキルが入れば、今の俺には勝ち目がない。

さっき魔力と破壊属性をほとんど使ったのは間違いだったか

俺はドラゴンの操り主であろうべフィスに剣圧による火の斬撃波を飛ばした。

「うぅぐぐがっは!」

 ベフィスが吹き飛び力付きた。だが黒ローブは全く気にしない雰囲気で立っている。

「はっはっは! 面白い、面白い! なんですか! その魔法はレポートにも手帳にもかいて無かった! 素晴らしい!」

 ローブの男は高笑いを繰り返している。

『子龍魔法:アイスバレット!」

 氷の玉はドラゴンの腹に突き刺さるが全く気にした様子がないもう魔力がない

「クック! いいでしょうこちらも本気を出すとしましょう!」

 そう言って指を鳴らすと先ほどのドラゴンが11匹のドラゴンが近づいてきた。これは無理だ……

 そう諦めドラゴンが吐く火球を受け止めようとした時オレの前に、同じくらいの身長の女の子が飛び出てきた。

 そのまま女の子に火球は直撃して吹き飛んだ。

「シルヴィィィィ!」

俺はシルヴィに駆け寄った。

「おい、なんで!何でこっちに来た!」

 シルヴィは弱々しく微笑むとオレの頬に手を伸ばした。俺はその手を掴む。

「エルビスには死んでほしくなかったの……」

 そう言ってそれ以上何も言う事もなくシルヴィの手から力が抜けた。俺の選んだ白い服が真っ赤に染まっていく。

「あああぁぁぁぁぁぁぁうわあああああああ」

 俺は回復の秘術を発動した。対価はなんだ! 何でも持って行け! 腕でも足でも命でも全部やる!

 だが回復の秘術は掻き消えた。なんでだ? オレの背後にディーネがよろよろと近づいてきた。

「マスター、シルヴィさんは命を失ったのではありません。奪われました、あのドラゴンは命を吸収するようです。回復の秘術は失ったものを回復という形で取り戻すスキルです。失ったのではなく奪われたので回復の秘術は発動しません……」

 嘘だろ……俺は失ったのだシルヴィをそしてシルヴィとの時間をこの村での生活をこれから過ごす人生のすべてを全部全部だ……