「俺、驚いたぞ……お前の手がむしり取られた後、急に腕が生えてきたのが……ってお前本当に腕無くしたのか? 俺の幻覚じゃないか?」

「いや普通に取れましたよ。無い言ってるんですかカインさん、あそこに俺の腕が落ちてるじゃないですか」

俺の指差した方に俺の左手が落ちていた。グロ映画かな?

「ってお前……腕拾ってこいよ! それ普通に事件だぞ」

「この腕どうしましょう……ぐろい」

「燃やして埋めとけ」

そうは言ったが、俺はこれをいたずらに使いたくてウズウズしている。

「ぐわぁぁぁぁ」

そう叫んで門の前にいるシルヴィに投げた。

「ひ、いやあぁぁぁぁぁ」

シルヴィの絶叫が聞こえてくる。そしてカインさんが俺の頭を大剣の腹で叩いてきた。

「いでっ」

「なにやってんだこのボケ、シルヴィが泣いてるぞ」

「す、すみません。少し遊んでみたくなちゃって」

「お前なぁ、あんなの目の前に投げられたら俺だって叫ぶわ! しかも目の前に腕が飛んでくる前にお前の悲鳴付きだ。普通にお前の腕がぶっ飛んだみたいにしか聞こえないぞ」

「そ、そうですね……回収してきます」

門を開け、シルヴィを見ると蹲って泣いていた。

「し、シルヴィごめん。俺は大丈夫だから、ほら……腕あるだろ」

「ぐすっ……ほんとだ……じゃあこれ誰の腕なの?」

「俺だ!」

「うわぁあぁぁぁx」

閑話休題

「ぐすっお疲れ様、お水持って来た。カインさんもどうぞ」

「さっきは怒鳴ってごめんな?」

そう言うとシルヴィは首を振る。

「私が弱いから気にしないで」

満々の笑みでそう言ってはいるが気にしているようだ。そしてシルヴィの心にもダメージを与えているみたいだ。

「明日のリーナスの町観光楽しみにしててくれ」

「うん! ところで明日ディーネさん来るの?」

「行きます! マスターと一緒に!」

ディーネが剣から出てきて自信満々にそう言ったが俺は連れて行く気はない

「ディーネは連れて行かないぞ、明日は二人で回ろう!」

「うん!」

久しぶりにシルヴィの笑顔を見た気がする。なんか安心するな。良かった。 

「そんな! マスタ~私も一緒に連れて行って下さい」

「駄目だ。今日はもう帰るぞ! 明日は、早いからな!」

俺はディーネを連れて帰った。帰り際シルヴィがうらやましそうな顔をしていたのは言うまでもない。俺に付いてくるカインさんも俺のことを羨ましげに見ていた。マリアさんのことだろう。

「ただいま」

「おかえりなさい、エルビス!……その女の子は一体……」

あ、なんも考えてなかった。どうしよう

「あ、どうもどうも、お母様! エルビスさんと契約した精霊でございます。」

ディーネが勝手に自己紹介を始めた。何してんだ!

「せ、精霊様!」

母親は急にディーネにひざまずいた。え、何?こわ

混乱する俺にカインさんは笑いながら説明し始めた。

「クックック、こういう田舎の村では精霊信仰をしている人が多いんだよ。お前の母親もそうだろうが、気がついてなかったのか?」

「いや、え……そうなんだ。知らなかった」

母親は少し怒った顔をしている。

「エルビスも跪きなさい! 失礼でしょ!」

いや知らんがな、なんで契約した自分の精霊に跪かなきゃいけないんだ! 個人で精霊を信するのは勝手だけど信仰してない人に押し付けないでほしいんだが。


「カインさん助けて下さい。なにが嫌で自分の契約した精霊に跪かなきゃいけないんだ」

「お母様、エルビス君はいいんです。私も自分のパートナーに跪かれたりしたら、私が困っていまいます」

そう言いって、こちらにウィンクしながらフォローしてくれるディーネ、助かった。まぁ君が剣に戻ってくれていたらそんな必要もなかったんだけど。

リビングに行くと父親も同じ反応をした。そして現在ディーネは、うちの家族とカインさんと食卓を共にしている。

「これおいしいですね! お母様!」

媚びを売りまくっているディーネを無視して寝ることにした。

完全に睡眠してシルヴィと遊ぶ夢を見ているとシルヴィが布団に入ってきた。

「えへへへ、エルビス好き~結婚しよ」

さすがにこれは夢だという内容を見て目を覚ますとディーネが俺の布団に入っていた。
お前かい!

ベッドがきつい、邪魔、剣に戻らないかな。早く寝ないと明日は早いのに……そこから30分してようやく睡眠に入ることができた。

明日はシルヴィとデートだ。