「ん? どうした、何が起こった?」

そのキーボードが、突然無効化された。

入力したはずの文字が画面に反映されない。

「どういうこと? CPU? 濡れた基板?」

俺と竹内は、パッと手をそこから離す。

「基板は全て取り替えた。問題はない」

竹内がそう言い終わるか終わらないうちに、メインサーバーは動き出した。

どろりと鈍くなった動き方で、画面が切り替わる。

「ちょ、どういうこと?」

突然巨大ディスプレイに、防犯カメラからの地下基地内部が映し出された。

俺たちは画面の中の自分と遭遇する。

その様子は全世界にネット配信されていた。

俺は電源ボタンに手を伸ばす。

だけどそれは俺の触れるよりも早く、プツンと途切れた。

竹内の端末は瞬時に鳴り響く。

「今のでお前たちの姿もその支部も、全て知れ渡ったと思え。もはや安全は保証できない」

隊長の声が、脳に直接響く。

「警視庁サイバー攻撃特別捜査対応専門機動部隊久谷支部は、ただいまをもって無期限停止処分とする。以上」

支部のメインコンピュータは、静かにその機能を停止した。

コントロールを失った壁面走行ロボットは、ゴトリと床に転げ落ちた。