俺はその日、朝から身支度を調え外に出た。

とりあえずの言い訳として、バイトの面接に行ってくると伝えると、遠足に出かける子供を送り出すかのように、母だけがはしゃいでいる。

社会復帰を喜ぶその姿に、複雑な感情を抱えてしまう。

「じゃあ……行ってきます」

「うん、気をつけてね!」

俺だって緊張しているんだ。

事前に地図で検索しても、その場所には何も記されていない。

見下ろした母と目が合う。

「行ってきます」

手足が同時に動いているのが分かる。

胸の動悸が収まらない。

一見市販の携帯端末のように見えるこの小型機器は、俺が部隊からの仕様を元に自作した特別仕様品だ。

そこに表示されたルートに従って歩く。

目的地は遠くない。

住宅街を抜け、通りに面した道に出る。

交通量はそれほど多くはない。

十字の交差点を渡ったその先に、部隊の秘密基地と思われる建物が見えた。

自動開閉式のガラス戸を抜けると、来客を知らせるチャイムが鳴り響く。

「いらっしゃいませ!」

その爽やかすぎるかけ声に、俺の体はビクリと震えた。

白地に空色のストライプが入ったお揃いのシャツ。

配送されたばかりのおにぎりが入ったトレイを抱えた若い女性は振り返る。

そう、ここはコンビニエンスストアだ。