竹内の言葉通り、飯塚さんの追跡に本部はかかりきりになってしまった。

換気ダクトの出力を最大値に設定して、籠もった湿気を外に出す。

サーバーは入れ替えることが決定した。

それだけでも大きな損害を出している。

コンビニは営業停止の張り紙をして、店舗用アンドロイドをお掃除片付けロボに書き換えた。

時間はもう、夜9時をまわっている。

ここにはもういない、飯塚さんといづみの人形も動いていた。

「飯塚さん!」

俺はそれに向かって、大声を上げる。

「はい。なんでしょうか」

『飯塚』と名札のついているアンドロイドは、搭載されたAIで返事を返す。

「いつからこんなことを!」

「つい先ほどです。片付けを優先するようにしています」

「何を考えてんだよ」

「すみません、申し訳ございません」

「……本当に、何考えてんだよ……」

俺はそのロボットの肩に手をかけた。

触れた感触も、人の肩と変わらない。

「申し訳ございません。私にはそれに対する答えを、持ち合わせておりません」

鼻水をすする。

なんだよその答え……。

「答えなんかないさ。あるとしたら、さっさと片付けを終わらせることだ。重人、ちょっとこっち来い」

竹内は支部のメインディスプレイを操作した。

「飯塚さんの電波ジャックは全国放送だった。あの破壊された噴水はすでに民間レベルで特定されている」

ネットは騒然としていた。

破壊された噴水の残骸画像が、世界中にあふれる。

「これ、横浜方面の公園だ」

横浜といっても、ずいぶんと田舎の山奥だ。

人気もなかったのだろう。

特定されるまでに、しばらく時間がかかっている。