「重人!」

全身に加速を感じる。

何かのボタンが色々とついている操縦桿を握りしめた。

ガタガタとした振動が脳を揺さぶる。

モニターには高速で移動するコンクリートの壁だけが映っている。

何度か回転し、やがて背を下にして倒れる。

スピードが落ちたかと思った瞬間、ガタンという衝撃と共に、移動は終わった。

「セットアップ完了、起動します」

微細な振動が全身を包む。

暗闇の世界に、一筋の光が差し込んだ。

「空だ」

この頭上を覆う地下シールドが全て放たれた時、俺たちは外に出るのだろう。

きっと驚きと歓声と共に、迎え入れられるに違いない。

そうすれば俺たち特殊部隊の存在は公のものとなり、『天命』の役割も知られることとなる。

大騒ぎになるだろうな。

「重人、操縦桿の根元、緊急停止ボタンだ!」

竹内が何かを言っている。

飯塚さんの望みとは、結局なんだったのだろう。

世界を変える? とか、言ってた?

「おい、何してる。さっさと押せ」

もしこのまま都庁がロボ化したら、俺もヒーローだな。

テレビの取材とかがいっぱい来て、コメンテーターの席に座って、先頭に立って、俺がこれまでの政府隠蔽を糾弾してやろうか。

都庁前にいたカメラマンの姿が浮かぶ。

「お前、まさか……」

そうだ、それが正義だ。

これこそが、正しい姿ってもんだろ。

指が動いた。