人間というのは、生まれてから死ぬまでずっと、変わり続けるものらしい。
 あるときはそれを成長と呼び、あるときは変化と呼び、そしてあるときは退化と呼ぶ。

 十代。それは子供から大人へと変わっていく、一生のうちに一度しかないかけがえのない時だ。

 わたしが出会ったとき、彼の心には大きな穴がぽっかりと開いていて、ヒリヒリとした肌を切るような冷たい風が吹き抜けていた。

 まだまだ青くて(つたな)くて。
 少しのことであっという間に折れてしまうほどには(もろ)くて足りない。
 小さくて弱く、どうしようもないと自分を嘆く夜もある。

 だけどそれは、この先ずっと続いていくわけじゃない。子供はいつか、大人になる。しかしそこに明確な線引きなんて実はなくて、自分でも気づかないうちに変わっていくものなのかもしれない。

 人間は変わり続ける。何度だって、立ち上がることができる。空っぽになってしまった自分のことも、大切に思うことができる。


 ──これは、そんな〝彼〟の物語だ。