「……松井……?」
被せるように発言する私に課長は、驚いていた。
話を断ると言おうとしたのは、見てすぐに分かった。
だから、言わせないようにした。
だってこの人は、部長になるべき存在だ。
私のために断るなんて馬鹿な事はしてほしくなかった。
「引っ越しの準備なら俺達も手伝いますよ?」
男性社員達は、張り切って言ってくれた。
上司が大出世するのは、男性社員にとったら誇らしい。
凄い人の下で働いていたと自慢が出来るから
課長は、少し戸惑っていたが。
「亜季……あんた本当にそれでいいの?」
「……うん。もう決めたから」
美奈子が、心配をしてくれたが私の中で決心していた。
八神さんの言葉を思い出す。
確かに八神さんの言った通りなんだと思う。
課長にとったら私は、邪魔な存在。
だからお別れをしないといけない。
この人の負担にならないためにも……。
本心では、別れたい訳じゃないけどこの人の背中を押してあげなくちゃあ!!
私は、その夜。課長にメールを送った。
大事な話があると……。
待ち合わせ場所は、小料理屋にするか迷ったけど
綺麗な夜景が見える場所にした。最後に課長と見たかったから
「大事な話って何だ?」
課長がそう言ってきた。
私は、静かに決心すると課長の目を見て話した。
美しい夜景を見ているはずなのに私の心は、
真っ暗でずっと曇り空のようだ。
でも言わなくちゃあ……課長のために。
「課長……私と別れて下さい」
「……えっ?どうしてだ!?
昨日の発言といい今日といい……お前は、それでいいのか!?」
いい訳がない。でも、このままじゃいけない。
私じゃあ、課長の負担になるだけでダメにしてしまう。
別れ時なのだ。
「私……昔から課長の事が苦手でした。
いつも怒ってばかりで怖くて美奈……玉田さんと噂してて。
だから課長とお見合いをすると知ったとき地獄かと思いました。
でも、少しずつ課長のいろんな所が知れました。
優しさや温かさや……」