「そんなことは、ありえません!!」
「でもさ……そのままでいいのか?
君が居る以上課長も迷うだろう。
現に君とすれ違っているし……それについて来て
ほしいとも言われなかったんだろ?」
言い返せなかった。確かに私が居る以上
課長は、行くのを迷うだろう。
それに一緒に来てほしいとも言われなかった。
付き合っていても妻ではない以上私から言うのも変だ。
それに私は、今大きな仕事を抱えている。
夢のある仕事で念願の担当だし、そのために今まで頑張ってきた。
最後までやりきりたい。
大体海外に行っても英語なんてまったく話せないし
彼の負担しかならない。
どちらが課長にとったらいいのだろうか……?
出世か……私か……。
「課長にとったら出世は、悪い事じゃない。
大変名誉な事だ。だが、男として選ぶなら君だろうな。
課長次第でもあるけど背中を押してあげられるのは、
亜季。君なんじゃない?」
「………」
背中を押してあげられるは……私だけ?
八神さんの言葉が、ずっと私の頭の中に残っていた。
自宅に帰ってもずっと私は、どうしたらいいの?
しかし噂話は、すでに部署の中まで広まっていた。
本当……人の噂って広まるのが早い。
「ねぇ、どうだった?
亜季。課長から聞いたんでしょ?」
「うん。聞いたら半分本当だった。
ただし飛ばされる訳じゃなくて海外の会社に部長として呼ばれたみたい」
「えぇっ?海外の部長って……大出世じゃない!!」
「ちょっと……美奈子。声大きいから!?」
慌てて止めるが周りに聞かれてしまう。
さらに騒ぎになってしまった。
どうしよう。こんなに騒ぎになってしまった。
「あの、まだ課長は、迷っている訳で
どうなるか分からないですし」
「どうして?こんな大出世を断る奴なんていないだろ?
いたら馬鹿じゃん」