笑顔のまま立ち去ろうとした。だが
「亜季。待てよ!?」と無理やり腕を掴まれ抱き締められてしまう。
 ちょっ!?急に抱き締められたので動揺してしまった。

「や、八神さん!?」

「どうしても俺じゃダメか!?
課長じゃないと涙の理由すら話してくれないのか?」

 悲しそうに言われる。そんな事を……言わないで泣いてしまうから
ダメだと思うのに思わず泣いてしまった。
 泣くはずじゃなかったのに。
結局八神さんにワケを話した……。

「……そうか。櫻井課長。
俺が前に行っていた会社に行くことになったのか」

「は、はい」

今近くの喫茶店の中に居る。
 そういえば…その会社。八神さんも以前に行っていた会社だ。
何という偶然だろうか……。

「あそこに部長として行くなんて、凄いよ!
かなりの出世だ。」

「……そうですよね」

 やっぱり課長にとったら願ったり叶ったりなのだろう。
それもそうだろう……大出生なのだから。胸が余計に痛んだ。

「本当は、どうしたいんだ?
嫌なら、きちんと断らせるべきだと思うけど」

「ですが、私には……言えません。
行かないでなんて……せっかくのチャンスなのに」

 そんな凄い会社なら、なおさら壊させたくない。
自分のワガママで反対だなんて……。落ち込む私に八神さんは、

「俺さ……前に言ったよね?君と課長は、合わないって
それってやっぱり当たっていたと思うんだ!
 いつか、すれ違うような気がしていた。
別れ時なんじゃないか?」と言ってくる。