課長の行動はいつも勇気をくれる。
私もこのままじゃダメだと思わせてくれた。
すると課長は、照れたのを隠すように慌てて鍵を開けてくれた。
「と、とにかく中に入れ。寒いだろう……」
「……はい」
私も釣られて頬が熱くなってきた。
自宅に入らせてもらうと課長は、キッチンで買って来た袋を置いていた。
野菜がいっぱい入ってるように見えた。
「あの……何を作る気ですか?」
「あぁ、鍋を作ろうと思って寒いし身体も心も温まるだろ?」
「いいですねぇ~私も手伝います」
鍋か……。確かに身体も心も温まりそう。
私は、急いでお手伝いするためにキッチンに向かった。
そして、一緒に鍋を作って食べた。
課長の作る鍋は、野菜や具材がたくさん入っていて美味しい。
「どうだ?男料理だから豪快な感じになってしまうが……味付けは?」
「凄く美味しいです。温まる~」
ホクホクした気分になる。
確かに身体も心も温まった。だけどそれだけじゃない。
課長の気遣いや優しさが鍋にも現れているように感じた。
あ、いけない……。
そう思ったら自然と涙が溢れてきた。
ダメね。年をとると涙もろくなってしまって……。
「松井……?どうした?嫌な事でも思い出したのか?
それとも不味かったか?」
「いえ……ただの嬉し涙です」
涙を拭きながら伝えた。
辛かったからこそ課長の優しさが目に染みる。