だけど、まさか自分がやられる側になるなんて……。
いい年をした私に。涙で仕事どころではなかった。
 どのみちファイルが無いと仕事が出来ないし
課長に泣き顔を見られたくない……。

「……ごめん。美奈子……私早退するわ」

「……そうね。その方がいいわ。
課長には、私から早退するって言っておくから」

「ありがとう。迷惑をかけてごめんなさい」

 謝罪をすると荷物を持って部署から出た。
美奈子と別れると1人トボトボと電車に乗った。
 こんな時間に帰宅する自分が情けなくて仕方がない。

これから、どうしたらいいのだろうか?
 噂になっている自分が否定した所で誰も信じてくれない。
言い訳をしているとしか思われないなんて理不尽だと思う。

 電車に乗りながらスマホをずっと眺めていた。
そうしたらスマホが光りだしメール着信になる。
 誰から……?見ると美奈子からだった。

 『大丈夫?あの後、課長に出勤してきて
悪いと思ったけど事情を全部話したの。
 そうしたら課長ったら凄い剣幕で部署全員を叱り飛ばしたわよ!』

「えぇっ!?」

 あまりにも驚いて声が出てしまった。
電車の乗客は、こちらを見る。
 ハッと気づくと恥ずかしくなった。

「……すみません」

恥ずかしそうに俯いた。しばらくするともう1件来る。

『今、こっそりメール中。これ以上やるなら警察沙汰にするって。
で、亜季と付き合っているのは、俺だと正直に話していたわよ!
だから嫌がらせをして傷つける奴は、俺が許さないって……あんたの課長。
ちょっと……見直しちゃった。私』

 美奈子からそう送られてきた。
課長が、私のためにわざわざ皆の前で話してくれたの?
 私達が付き合っているって……。