その声に一瞬泣きそうになった。良かった……。
美奈子まで噂を信じて嫌われたらどうしようかと思っていた。

「大丈夫よ!噂は、あくまでも噂。
真実じゃない以上すぐに皆忘れるわよ?」

「…うん。ありがとう……」

そうだといいんだけど……。
 美奈子が温かい言葉をくれた。そして戸惑っている
私をデスクに行くようにしてくれた。
 課長が出勤した頃には、何も無かったかのように通常に戻っていた。

 私も気を取り直して仕事に打ち込んだ。
美奈子は、そんな私に気遣ってかお茶を代わりに淹れてくれた。

「はい。亜季の分」

「ありがとう……」

 お茶を受け取り一口飲む。
やっと少し気持ちが落ち着いてきた。
 こんな事で動揺するなんて情けないわよね。

気にしないようにしなくちゃあ!!
 だが、噂を信じている社員は、思ったより多かった。
仕事をしているとドサッと大量の資料を私のデスクに置かれる。

「……えっ?」

「これだけの資料を全部まとめといてくれる?松井さん」

「あの……これ全部。私1人でですか?」

 いくら何でも1人で出来る量じゃない。
それに自分のやっている仕事もあるし担当の仕事でもない。

「出来るでしょ?あちらこちらの男性を口説いている暇があるなら。
お願いしますね?こっちは、そんなことが出来ないぐらい忙しいので」