「だ、大丈夫です。 まだ少し痛みますが……その……歩けますし」

 心配されるほど大げさなものじゃない。
多分……大丈夫。会社に行けるはずだ。
 そのことに話をふれてきたので恥ずかしくなった。

「無理しない方がいい。お前は、有休がたくさんあるんだから休め」

「ですが……」

「そうなったのは、俺が原因だ!
気を遣わなくてもいい。今日1日ゆっくり休んでいろ」

 課長にそう言われると休まないといけない気がする。
申し訳ない気持ちもあるけど……正直助かったわ。

「あの……ありがとうございます」

「いや、お礼を言われるような事は、何もしていないし……」

少し困った様子で言う課長に苦笑いした。
 そして朝食が終わると課長は、仕事に行く身支度をしていた。
 いつもの姿だ。スーツ姿の課長は、よく似合うと思った。

「あ、そうだ。これをお前に渡しておく」

「これは……」

「家の合い鍵だ。そのまま持っててくれ。
俺は、行くけど……自由に出入りしていいから」

 嬉しい……。課長の自宅の合い鍵を貰う事が出来た。
これで課長と恋人同士になれたのね!
 私は、その鍵を大事そうに受け取った。

「じゃあ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 まるで夫婦みたいな会話だ。
課長を見送ると鼻歌を歌いながら食べた食器を洗う。
 まだ身体は、ダルいけど……幸せの痛み。 平気だ。