私は、ドアを思い切り閉めた。
泣き崩れた。課長に拒否られたのがショックだった。
 せっかく勇気を出したのに……。
しばらくして服に着替えて帰り支度をする。
顔は、涙でぐちゃぐちゃだ。

「……それでは、失礼します」

 玄関で頭を下げて出て行く。
課長は、何も言わないままただ黙って私を見送っていた。

 何と情けなく惨めな状況だろう。
必死に勇気を出して自分から誘ったくせに……。
 気づけば、こうやって相手に拒否られ1人で帰るはめに。

 次からどうやって課長と顔を突き合わせればいいのだろうか?
 エレベーターから降りると私は、トボトボと歩き出した。
チラッとマンションを見ると何だか切なくなっていく。
 涙が溢れそうになりながら行こうとしたとき

「松井!!」

えっ……?
 振り向くと課長が息を切らせながら追いかけてきた。
どうして……?
 私は、まさか追いかけてくれるなんて思わなかったから驚いた。

「課長……どうして?」

 凄い汗……階段をおりて来たのだろうか?
私は、立ち止まり課長の方を振り向くように立った。
 そうしたら息を整えながら

「……さっきの話だが訂正させて欲しい。
やっぱり、俺……君を帰したくない。
 もし子供がデキても俺が責任を取るし頭だって下げる。
だから……もう一度部屋に来てくれないか?」

 真っ直ぐに私を見て言ってくれた。
私は、驚いたがとても嬉しかった。その言葉が……。

「……はい」

 私は、小さく頷いた。
そして手を引かれマンションの中に入って行く。
 今度は、ちゃんと課長と愛し合うために。

後で課長も未経験だと知った。
 お互いに初めてな事ばかりで……だけど
気持ちがやっと通じ合えたような気がする。
幸せなひとときだった。