課長は、そう言うとキッチンの方に行き
ヤカンに水を入れるとコンロに火をつけた。
「あ、ありがとうございます」
私は、触るのをやめて大人しくソファーに座ることにした。
改めて自分は、課長の自宅に居るのだと再確認させられる。
どうしよう……。
このまま行くとやっぱり関係を持つ事になるのよね?やっぱり……。
自分から大胆に発言しておきながらビビってしまう。
男性とは、学生の頃に付き合った事はあるが……経験はない。
生まれて初めてなのだ!
課長に初めてだと言ったら引かれるかしら?
さすがに、この年で経験がないなんて言いにくい。
男性なら引かれる所なのかしら?
何だか不安になっていく。 そうすると課長がコーヒーを淹れて持ってきた。
「松井は、クリープだったな?
悪い……クリープとか置いてないんだ」
そう言ってコーヒーの入ったマグカップを私に渡してくれた。
「いえ……無くても大丈夫です。
ありがとうございます」
お礼を言い受け取った。課長……覚えててくれたんだ。
私がいつもコーヒーにクリープを入れることを。
課長も隣に座り一緒に飲んだ。何だか贅沢な気持ちになった。
しかし、ずっとこのままという訳にはいかない。
私は、意を決して課長の自宅に来たのだ!
言わば、泊まりに来たようなものだ。
何の用意もしてきていないしまだ心が追いつかない。
この場合…自分からシャワーを浴びるって言った方がいいのかしら?
全てが初めてのため順序がよく分からないでいた。
この後……どうしたらいいのだろうか?
「…あの……私、先にシャワーを浴びて来ましょうか?」
思い切って尋ねてみた。そうしたら目線を逸らしながら課長は、
「シャワー浴びたいならリビングを出て右側の突き当たりにあるから」と
頬を赤くしながらも教えてくれた。
「わ、分かりました。ありがとうございます。
なら、お先に失礼します」
「バスタオルは、好きなの使っていいから」