「私……課長の家に行きたい」

 課長は、曖昧に返事をするが頬は赤い。
私は、思いきってもう一度おねだりをしてみる。
 自分でも驚くほどの大胆な発言かも知れない。

「……そう言うのは、俺だけにしろよ?」

 すると課長は、私の手を優しく握ってくれた。
こんなこと、課長以外に言う訳がないもの。
 私は、頷く。そして手を引かれ夜の街を歩き出した。
その後ろ姿は、すでに恋人同士のようだった。

 駅から少し離れた場所に課長の住んでいるマンションがあった。
 私の住んでいる安いアパートと違い立派なマンションだ。
エレベーターまであるし。
 エレベーターで5階に上がると課長の部屋まで案内される。

「ココが俺の部屋だ!」

「お邪魔します……」

 鍵を開けて中に通してくれた。
緊張で心臓がバクバクと高鳴っていた。
 玄関からリビングの方に案内されるが
几帳面な課長の性格がよく出ていてホコリ1つない。

 リビングの中に入ると仕切ったように半分は、整理整頓されているが
もう半分は、健康グッズがギッシリと置いてあった。
 あれは、電動で走るマシーンね。名前何だったかしら?

「凄い健康グッズですね?」

「こんなのばかりで引いたか?
すまない。買い集めていたらこうなってしまったんだ」

 課長は恥ずかしそうに言ってきた。
これだけ集めるのにどれぐらいかかったのだろうか?

「いいえ……逆にどんなのがあるか興味があります」

 私は、健康グッズが置いてある場所に行き触ってみる。
うわぁ……これなんて重い。
ズシッと重みがのしかかってきた。

「松井。危ないからそう言うのは、あまり触れるな。
 今、お茶を淹れるから適当にソファーにでも座っててくれ」