「俺は、お見合い相手が君だと知ったから
お見合いを引き受けたんだ!」
えっ?今なんて……!?
課長は、目線を逸らしてきた。
しかも、ほんのり頬が赤くなっているではないか。
「俺は…昔からこの顔立ちのせいか変な誤解をされやすい。
だけど…君がお見合い相手だと分かり
どうしても諦め切れなくて…気になってたんだ。
入社した頃から…でも、こんな風貌や立場上
その…上手く接してやれなかった」
えぇっ……?
課長が、しどろもどろで話している姿は、
初めてみた。それって…つまり。
思い上がりかも知れないが、そう考えたら
心臓がドキドキと高鳴ってきた。
「それって…私の事…好きって事ですか?」
思わず口から出てしまった。
するとその瞬間だった。顔を赤くする課長に
私の予想が当たっていたと理解する。
「いや…その…申し訳ない。嫌なら断ってくれてもいいんだ!
強制でも何でも無いから。ただ…これだけは、
言わして欲しい」
そう言うと壁から手を離し私の頭をポンポンと撫でてきた。
「これから少しずつでいい…俺の事を知って欲しい。
好きになってくれたら嬉しい」
少し照れくさそうに言ってきた。
その表情にぬくもりがある優しい手は、
今まで見てきた課長とは違った。
何だか心臓の辺がポカポカと温かい。
そして、キュンと締め付けられるような
気持ちになった。何、この気持ち!?
「悪かったな。強引なやり方をして
戻ろう…家族が心配をしているだろうし」
課長は、静かに歩き出した。でも振り向き様に
「行くぞ?松井」といつものように私の苗字を呼んだ。
あれれ?いつものように呼ばれているだけなのに
何だか恥ずかしくなってきた。
「は、はい」