確かに吐いた所を見られるよりマシだけど、例えが嫌かも
思わず吐いた時のことを思い出してしまった。

「美奈子。例えがちょっと……」

「あら。私は、衝撃的だったけど?
フフッ…ほら、エレベーターが来たから乗るわよ!」

「どーせ向こうも興味本位だからその内に忘れるでしょ?
気にしない、気にしない」

 意外と気楽に考える美奈子に苦笑いをする。
そうだといいけど……。
 だけど彼の興味本位は、それで終わらなかった。
仕事が終わり廊下を歩いていると

「松井さん」

 あの声は……まさか!?
恐る恐る振り向くと八神さんだった。何で……また私に?

「今仕事が終わったの?」

「は、はい。まぁ…そうですが」

「なら、一緒にこれから食事でも行かない?
さっきの話。聞きそびれちゃったし」

 ニコッと微笑みながらそう言って誘ってきた。
本来ならときめく所なのかも知れない。
 こんなイケメンな男性に食事に誘われたのだから
だが私は、食事に誘われても困るだけだ。
 何を聞かれるか分かったものではないし、人の目がある。

「いえ…遠慮しておきます」

「いいから、いいから」

「えっ?ちょっと…八神さん!?」

断る私の手を強引に引いてきた。
 しかし彼は、そんな事は気にせずに連れ出されてしまう。
周りに注目を浴びたのは、言うまでもない。