「あ、名前覚えてくれたんだ?
嬉しいなぁ~もしかして、もうお昼休み済んだの?」

「えっ?はい…まぁ……」

何故お昼休みの事を気にするのだろうか?
 不思議に思いながら首を傾げると
八神さんは、残念そうな表情をしてきた。

「そっか…残念。せっかくだから
昨日の事も踏まえて話を聞きたかったのにな」

 えっ?何故……それを持ち出すの!?
忘れてて欲しかったのに…しかもこんなところで。
 私は、恥ずかしくていたたまれなくなる。

「す、すみませんでした!!」

 私は、頭を下げるとその場から逃げ出してしまった。
美奈子が慌てて追いかけてくれたが。
 エレベーター近くで息を切らしながら立ち止まった。
全速力で逃げたためヘトヘトだった。

「もう……亜季ったら急に逃げ出さないでよ!?
せっかくあのイケメンの八神さんと話が出来たのに」

「……ごめん。どうしてもいたたまれなくて…」

 だって、昨日の事を持ち出すんだもん。
忘れて欲しかった……見た記憶を。なのにバッチリ覚えているから

「あんたもしかして…昨日の事で何か見られたの?
泣いている所とかさ?」

 うっ……ここにも鋭い人が。
恥ずかしくて思わず黙り込んでしまう。
 すると美奈子は、察したのかため息を吐いてきた。

「図星か……」

「だって、まさか彼が来るなんて思わなかったんだもん。
しかも泣き顔なんて…恥ずかしいわ」

「まぁ、確かに。でも、吐いた所を見られるよりマシでしょ?
気にしないことよ!」