不思議そうに部署に入ると先に
会社に来ていた美奈子が私に気づいた。
そしてこちらに来た。
「亜季。おはよう。ねぇ、聞いて聞いて。
今日異動してきた社員が凄いイケメンらしいわよ!?」
異動してきたイケメン……?
そうすると昨日の彼の事を思い出した。
あっ…そういえば今日からって言ってたわ!!
「……そうなんだ」
思わず顔が引きつる。恥ずかしい所を見られて
逃げてしまった。
出来たら二度と会いたくないと思っていたから人物だからだ。
「しかも、アメリカの我が社から
海外企画営業部に異動した期待のエリートとか
有名大学出身とかかなりレベル高いらしいわよ!?」
美奈子の表情は、かなりウキウキしていた。
私は、返事に困ってしまう。
すでに会ってしまった……。
もう学生のような雰囲気で色めく女性社員達。
どうもその雰囲気に一歩下がって見ていた。
前の私なら多少なりとも興味を持ったかも知れない。
エリートで、かなりのイケメン。
女子なら一度ぐらい興味を持つ人物だ。
だが今の私には、まったく惹きつけられるものが無かった。
頭の中は、課長の事ばかりだ。
課長との今後をどうするか母親の言葉が頭の中から離れない。
むしろ、そちらの方が重要だった。
「もう……反応が薄いわねぇ~亜季。
まぁ、あんたの場合は、意中の人が居るから仕方がないか」
「な、別にそんな訳じゃないわよ」
そう話す美奈子に頬が熱くなってしまった。
だが、そうしたら大きな怒鳴り声が聞こえてきた。
「こら、お前らココは、会社だぞ!?
朝から無駄口叩いている前にさっさと仕事しろ!!」
出勤してすぐに課長の怒鳴り声が社内に響いた。
一同静まり返った。
そして周りは、いつもの通りに自分らの仕事に戻った。
ただし女子社員は、不満そうだったけど……。