「…何故謝るんだ?」

 何故って…。こんな気まずい上に私がお見合い相手だからです。
 課長だって選ぶなら美人で清楚な人がいいだろう。
自分では不釣り合いだ。

「私がお見合い相手だからです。
ガッカリされたのは、承知しています。
 だからその…申し訳ありませんでした!!」

深々ともう一度頭を下げた。
 何故そんなに頭を下げて謝るのかは、自分でも
分からない。
 ただ…気まずいやら怖いやらで
何とか課長の機嫌を損ねたくなかった。

 櫻井課長は、そのまま黙り込んだ。
もしかして怒っている?
 それとも呆れて口に出して言えないのだろうか?

「…松井」

「は、はい」

 名前を呼ばれ思わず返事した。
全身ビクビクして震えていた。怒られる!!
 すると課長は、私の腕を掴まえて
そのまま料亭の壁際まで連れて行かれる。

えぇっ!?
すると勢いよく壁ドンをしてきた。ひぃぃっ~!!

 普通よく漫画やテレビで観る壁ドンって
胸キュンしたりドキドキするものじゃないの?
 今の私には、胸キュンより恐怖が優先していた。
これだと逃げることも出来ない。
 怖い……誰か助けて!!
思わず目をつぶりガタガタと震える。すると

「お前は、そんなに俺が怖いか?」

「えっ?」

 恐る恐る目を開けて課長を見ると
切なそうな表情で私を見ていた。

「櫻井課長…?」