「いえ、さっき来たばかりだから大丈夫です」
「……そうか。じゃあ、行こうか」
「はい」
笑顔でそう言うと伝票を持ち会計を済ませた。
連れて行かれたのは、美奈子と行った事がある
イタリアンのお店だった。
「女子社員に人気だと聞いたから、来た事はあるか?」
「あ、はい。玉田さんと一緒に…」
「……そうか。俺と一緒じゃ嫌かも知れないけど
今日は、我慢してくれ」
「いえ……全然構いません」
何だか照れくさいけど嬉しい。
だが、お店に入るとすぐに澤村さん達を見かけてしまう。
あ、澤村さん達だわ。どうしよう!?
一緒に居る所を見られたら何を言われるか分かったものじゃない。
課長に迷惑をかけてしまうし……。
「どうした?松井」
「あ、いえ…その……」
どうしたらいいか戸惑っていると課長も澤村さん達に気づいた。
「……店を替えるか」
「あ、でも……」
戸惑う私を察してか課長は、先に店から出てしまった。
どうしよう。このままだと課長を見られるのが嫌だと勘違いされてしまう。
前を歩く課長は、無言のままで私は、慌てて呼び止めた。