「あぁ、大丈夫。それに、お前も食べたいだろ?
あんなに楽しみにしていたんだからゆっくり食べろ」
「ですが……」
「何、子育ては、やれる奴がやればいい。
普段は、お前が面倒を見ているんだ」
課長は、クスッと笑うと和季にもう一口食べさせていた。
課長……私のために。
課長の優しさに胸がキュンと高鳴った。
そして課長のお陰で、ゆっくりと食事を楽しみことが出来た。
小さい子が居るとなかなか落ち着いて食事が出来ないから助かるわ。
食べ終わるとそのまま課長は、和季を寝かせてくれた。
大好きな絵本を読んでもらうが
和季は、疲れたのかすんなりと寝てくれた。
「今日は、寝付きがいいな。
たくさんはしゃいでいたから疲れたのだろうな」
課長は、布団をかけ直すとこちらに来てくれた。
私は、その間にお茶を淹れた。
窓にある椅子に座る課長にお茶を差し出した。
「すみません。旅行まで、色々と任せてしまって」
「何、大したことはない。
それよりもやっと大人の時間が楽しめるな」
「えっ……あっ!!」
確かに。今は、和季がすんなりと寝てくれたから
2人の時間が、ゆっくりと出来る。
意識をすると何だか恥ずかしくなってきた。
初めての旅行にこんな素敵な部屋で今は、2人きり。
まるで付き合った頃を思い出してしまう。
「……そうですね。付き合っていた頃は、
旅行だなんて考えてもみませんでしたし」
課長は、お茶を飲んだ。
あの頃は、とにかく課長の事が知りたくて
新しい発見が出来る事が嬉しかった。
遠出をしたことは、あったけどお泊まりで
旅行なんて……あの頃は、想像もしていなかったわ。