「すみません。私の子なんです。
今、主人が入れていまして……」
「あら。あなたのお子さんだったの?」
「……はい。どうも着替えが嫌みたいで」
私は、申し訳なさそうに周りの人に謝った。
すると向こうから
「ひぎゅああ……まんま~」と泣き叫ぶ声が。
「こら。和季。そこでママを呼ぶな。
俺が変に思われるだろ!?」
和季が泣きながら私の事を呼んでいたため
課長は、困惑していた。和季ったら……。
苦労している課長の顔が目に浮かんで申し訳ない気持ちになってきた。
私と違ってゆっくり入れないだろう。
「フフッ……あなたも大変ね。
でも男の子は、あれぐらいではないと」
「そうそう。ウチの子もあれぐらい元気に泣いていたわよ」
年配のお婆さん達が、笑いながらも快く許してくれた。
申し訳ないと思ったが、逆に励ましてもらったり
色々とアドバイスをしてくれた。
こういう交流も温泉旅行の楽しみの1つだろう。
温泉から出ると課長も和季を抱っこして男湯から出てきた。
「あなた。お疲れ様です。
隣からでも和季の泣き声が聞こえていました。
すみません……入れてもらって」
私は、謝りながら和季を抱き上げた。
本人は、いいお湯だったのか。
ホカホカして気持ち良さそうにボーとしていた。
「そうか……聞こえてきたか。
まったく。途中で泣きながらお前の名を呼ぶから
周りの視線が痛かったぞ。笑われるし……」
耳まで赤くしながら困惑した表情で言ってきた。
その光景を頭の中で浮かんでしまい
私は、思わずクスクスと笑ってしまった。
課長は、ため息混じりにしながらも少し照れていた。