するとハッと気づく。いけない。
課長の事ばかり考えているわ。
 何だか胸が締め付けられそうな気持ちになる。
不思議な気分だ。

 そんな気持ちを抱きながら翌日。
会社に行き課長を見ると相変わらずの姿だった。
 黙々と眉間にシワを寄せてパソコンに打ち込んでいた。

 あれは、怒っているのではなくて集中している姿だったのね!
これも新しい発見だった。

 今日もお茶を出したら喜んでくれるかしら?
そう思い席を立った。
 給湯室でお湯を沸かしていると誰かが入ってきた。
同じ部署で後輩の澤村梨香さんだった。

「お疲れ様です。あれ?それ、課長にですか?」

「えぇ、せっかくだから」

 そう言いながらお茶を湯のみに注ぎ終わると
急須を片付けた。
 するとそれを見て不思議に思ったのか

「松井先輩ってマメですよねぇ~?
 怖くないんですか?課長のこと」と私に聞いてきた。

「確かに怖いわね。 でも、悪い人じゃないわ」

 私も以前は、そう思っていたけど
ただ真面目で不器用な人ってだけだ。
 昨日話してそう感じた。そして意外と照れる姿が可愛い。

 「そうですかね?私は、あぁ言う人って
何考えてるか分からないから怖くて。
 それに何だか松井先輩って課長の事よく分かってるんですね?どうしてですか?」

 澤村さんがそう質問してきた。
ギクッと肩が震えた。そ、それは……。

「そう?勤めが長いから何となく分かるのよ」

「ふ~ん。そう言うもんですかね?
私には、よく分からないかも」

 不思議そうに首を傾げると冷蔵庫から
自分の飲み物を取り出して行ってしまう。
 行ったのを確認するとハァッ…と息を吐いた。
バレるかと思った…。