すると課長は、そのまま私をギュッと抱き締めてくれた。
私は、驚いたが思わず涙がこぼれそうになった。
 「課長……」と震えながら課長と呼んだ。

「俺だってお前のことを忘れた訳ではない。
 お前のこと……諦め切れなくて日本に戻れる時が
あったら、もう一度と何度、想ったか分からない。
 それを言うのは、本当は、俺の方だ。
松井……俺からももう一度……いや。結婚して欲しい」

 課長が抱き締めながらプロポーズをしてくれた。
涙が溢れてくる。課長は、私を受け入れてくれた。
 変わらずに想っていてくれたのが何より嬉しかった。

「……はい」

 ギュッと抱き締めながら私は、プロポーズを受け入れた。
そうしたら周りの人達から大きな拍手が巻き起こった。
 そういえば、会社の中だったんだ!?

 こんな大勢が見ている前で大胆な事をやってしまった。
周りの人達は、嬉しそうに祝福をしてくれる。
 どうやら言葉が通じなくても
雰囲気や行動で通じるものがあるらしい。
 お互い恥ずかしそうに見つめ直す。

 だけど、お互い気持ちが通じたからもう大丈夫。
課長と一緒に笑い合った。愛を確かめるように……。

 それから数年後が経った。
私達は、どうなったかと言うと……。

「もしもし。美奈子。今、日本の空港に着いたんだけど何処に居るの?
 えっ?近く……?うん、うん。
じゃあ、出口の近くで待っているから」

 私は、電話を切った。
美奈子に車で送ってもらう約束をしていた。
 すると課長が私のところに来た。

「玉田。何だって?」

「もうすぐ着くって…この辺で待っててほしいと言っていたわ。
久しぶりに会えるから楽しみ」

 課長にそう告げていると「ふぇぇっ…」と
課長が抱いている子供が目を覚ましたようでぐずりだした。

「よしよし。泣くな……和季」

 課長は、困ったようにあやしていた。
フフッ……何だか不思議な光景よね。いつ見ても。
私は、クスクスと笑った。