まるで禁断症状のように心の中がぽっかりと穴が空いた気持ちだった。
そんなモヤモヤした気持ちのまま日曜日に稲葉先輩と
デートすることになってしまった。
「佐久間さん。大丈夫?何だか顔色が優れないけど……」
稲葉先輩は、心配して声をかけてくれた。
相変わらず優しい……。
「いえ、緊張して寝不足なだけです。
でも平気ですから……行きましょう」
私は、笑顔で平気なふりをした。本当は、寝不足が続き食欲もない。
だけどせっかく社長を忘れられるチャンスなんだから
今日は、楽しまなくては……。
私は、無理してショッピングモールに向かった。
そこに映画館がある。映画は、ラブストーリーを観るが
普通に素敵な物語だった。
様々な困難を乗り越えて結ばれる純愛ものだったのだが
私には、辛過ぎる内容だった。涙が溢れて止まらなかった。
何処かで私と社長を重ね合わせていたのかもしれない。
映画が終わると休憩スペースに座って涙をハンカチで拭いていた。
「大丈夫?佐久間さん」
「すみません……迷惑をかけて」
「ハハッ……気にしなくていいよ。感動するストーリーだったし。
俺も久しぶりに涙が溢れてきた。待ってて
今何か飲み物を買って来るから」
ニコッと笑うと稲葉先輩は、飲み物を買いに行ってしまった。
優しい先輩に対して余計に罪悪感を覚える。
違う……映画が原因ではない。
本当は、分かっているのだ。
社長に対する気持ちが大き過ぎて耐えられなくなっていることに……。
社長は、もしかしてそれに気づかせるために
私に会いに来なかったのだろうか?
いや……考え過ぎか。ただ腹が立つから会わないだけよね。
お子様みたいな思考の持ち主だし……。
ハハッ……と笑うが虚しくなってきた。
私……何をしているのだろうか?
憧れの先輩の彼女になってデートをしているのに心から楽しめていない。