「あら、だって。それまでして夏希とヤりたいんでしょ?
 だったら、1回経験させてあげたら満足するんじゃない?」

 香菜子は、不思議そうにそう言ってきた。
……そうかしら?1回で済むとは思えない……。

「何言っているのよ!
 その1回が、やめられない原因を作るの。
特にあぁ言う癖のある男は!!
いい?絶対に断りなさいよ。夏希」

 それに対して恵美は、キッパリと否定してきた。
確かに癖のある社長だ!
 私は、恋愛経験が少ないがこれだけは分かる。
あんな人にハマったらなかなか抜け出せなくなるだろうって……。

 それぐらい社長の魅力は、絶大なのだ。
セクハラを除いては……。
 ハァッ…ともう一度ため息を吐いた。

 何で社長の異状なまでのセクハラと溺愛ぶりに
こうも悩まされないといけないのかしら?
 普通悩むなら自分の仕事の未熟さとか
売り上げとかじゃないの?
 あと普通の恋愛や結婚とかさ。

「そういえば、前から思ってたんだけどさ
社長の奥さんってどんな人なの?」

 すると突然、香奈子がそんなことを質問してきた。
社長の奥さん……。
 その言葉に胸がズキッと痛んだ。

「私は、まだ一度も会った事がない」

「え~秘書なのに?」

「だってプライベートは、一切踏み込んだらいけない契約だし。
 気になっても深く聞けないのよ」

 実は、私もちょっと気になるのよね。
社長の奥さんのことが……。

「会社では、一度も見た事がないの?」