私は、慌てて否定した。社長のことは忘れたい。
あんな人に振り回されていたら私の人生は、目茶苦茶だ。
なのに…気持ちが揺れ動いていた。すっかり社長に惑わされている。
「急な話なので……気持ちが整理つかなくて」
「あ、そうか。ごめん……チャンスが今日しか
無いと思ったら焦ってしまったようだ。
急かさないからゆっくり考えてくれたら嬉しい。
あ、これ……名刺。気持ちが決まったら連絡して。君のも貰ってもいい?」
「は、はい。えっと……あ、名刺ない」
「じゃあ、番号でもいいから教えて。
今度、日を改めて食事でも行かないか?」
稲葉先輩から食事の誘いが……。
私は、スケジュール帳に名前と携帯の番号を書いて破り彼に渡した。
ニコッと笑いお礼を言う稲葉先輩を見ていると
まるで忘れていた昔の自分の気持ちを思い出すようだった。
社長とは、違う想い……。
心臓がドキドキと高鳴りだした。
稲葉先輩に会ったことは、香奈子と恵美にも報告した。
時間を作ってもらい女子会を開いた。もちろん2人は、驚いていた。
「えっ?あの稲葉先輩に告られた!?」
「うん……なりゆきで……」
「えー羨ましい。あの稲葉先輩にねぇ~」
そういば香奈子も稲葉先輩に憧れていたっけ。
一緒にサッカー部まで見に行ったわよね。今になって思い出した。
「私は、稲葉先輩の告白を受け入れてみるのも
いいと思うのだけど……今回の件でハッキリしたんでしょ?社長との関係に」
すると恵美は、鋭いことを言ってきた。
社長のことも2人に話した。
慰安旅行という名の不倫旅行は、娘さんの風邪で中断で終わったって……。
「……うん」