「稲葉先輩……」

「あ、良かった。忘れられたのかと思ったよ。
 久しぶりだね……何年ぶりだろう?今、買い物中?」

「あ、はい。そうです……」

 思わないところで憧れていた先輩に再会が出来て
心臓がドキドキと高鳴ってしまった。懐かしい……。

「そうか。俺は、今営業で外回りしていた所なんだ。
 ここで会ったのも何かの縁だね。
せっかくだから、良かったらお茶でもしないか?」

「えっ?いいんですか?」

「あぁ、君が良かったらだけど……」

そう言いながら稲葉先輩は、少し照れたように笑った。
 社会人らしくビシッとスーツで決めているが
その少し照れたように笑う姿は、昔の先輩の面影があって懐かしく思えた。
 私は、承諾すると近くの喫茶店に入った。

 そしてお互いにコーヒーを注文すると高校の頃の話をして盛り上がった。
 懐かしい話が出て楽しい時間を過ごした。

「アハハッ……本当に懐かしいな。
佐久間さんと居ると昔の頃に戻ったみたいだよ!」

「私もです」

違うとすれば、こんな風に話が出来ていることだろうか。
 昔の私は、彼女も居たせいで声をかけられずに
遠くから応援をしているのが精一杯だった。

「でも昔の君は、遠くからサッカー部をよく見ていたよね?」

「えっ?気づいていたのですか!?」

「うん。君……目立っていたから」

 えぇっ?あんなに応援してくれるファンがたくさん居たのに。
目立って……どういう意味で!?
 まさか変な事をやらかしていたかしら?