「承知致しました」

そう言い目的地を変更させる。
 アクシデントがあってもすぐ新しく予定を組み立て
いつでも出来るように手配をしておくのも秘書の大事な仕事だ。

 そして何とか無事に今日の仕事を全部終わらせることが出来た。
 ハァッ……疲れた。自宅に帰るとそのままベッドにダイブした。
とんだハプニングが起きてしまった。

 でも、あの時の社長は…とても男らしくてカッコイイと思った。
 見直してしまうほどに……。
私は、疲れてそのまま静かに目を閉じた。

 しかし翌日。会社に行くと栗本さんが異動届を提出していた。えっ!?

「本当にいいのか?せっかく俺の秘書として右腕になって欲しかったのに」

「いえ……今回ので俺の力不足だとハッキリしました。
 まだ社長……いや佐久間さんの足元にも及びません。
これから、もっと自分を鍛え直したと思います」

 そう言って栗本さんは、頭を下げた。
まさかの栗本さんの行動に私は驚いた。
 彼は、深々ともう一度頭を下げると社長室から出て行った。
私は、慌てて栗本さんを追いかけた。

「栗本さん。何も異動する事ないじゃない?
力不足なら、これから頑張ってやればいいのだし何も異動までしなくても」

 すると栗本さんは、こちらを向き直し
「いいえ。佐久間さんを見て思ったんです。
 アクシデントや社長の突然の行動があっても
すぐ冷静に対応しスケジュールを組み立て直した。
 俺は、驚いてばかりで何も出来なかった」と言ってきた。

「それは、社長の突然の行動に慣れているだけよ!
すぐに栗本さんも慣れるわ」

 栗本さんの言葉に驚いた。
それは、社長の無知ぶりに慣れていただけだ。
 まぁ慣れ過ぎも時には、危険な場合があるけど

「いえ、それだけではありませんよ。
 あなたと社長を見ていたらお互い仕事で凄く信頼をしているのが分かりました。
 俺じゃあ、まず太刀打ちすら出来ない。
凄いと思います。社長もあなた……佐久間さんも
 俺も、もっと秘書の勉強をし直してまた挑戦したいと思います」

 そう言うと栗本さんは、静かに微笑んだ。あ、笑った!?