いやいや。自惚れたらダメよ!
だって相手は、社長の友人でもある田所様なんだし。
あんなイケメンで素敵な人が好意をもつなら
もっと美人ではないとおかしい。だが……。
スマホに登録した田所様の連絡先を見る。
何だか悪い気はしない。田所様は、独身だし…素敵な人だ。
社長には、悪いけどちょっとぐらい期待をしてもいいわよね?
そう思うとフフッと笑みをこぼしながら自宅に帰った。
翌日。早めに会社に行き社長を迎える準備をした。
台拭きで社長のデスクを拭いて片付けた。
今日のスケジュールのチェックと渡す資料の確認。
記入漏れがあったら大変だ。
そして会社の外に行き社長を待った。
何人かの重役や部下なども同じように待っていた。
しばらくして社長が時間通りに到着した。
私達は、頭を下げて出迎える。
『社長。おはようございます!』
「あぁ、おはよう」
何故だか今日の社長は、不機嫌だった。………何故?
周りの重役や部下も戸惑っていた。
普段ならウザいぐらいに上機嫌なのに
朝からこんなに不機嫌なのは珍しい。
いや。初めてかもしれない。一体どうしたのかしら?
「社長。あの…どうかなされましたか?」
「……別に。それより今日のスケジュールは?」
社長は、機嫌が悪いまま歩き出してしまう。
私は、慌てて追いかけた。
どう見たって何かあったに違いない。
夫婦喧嘩でもしたのだろうか?
「今日の予定は、9時半から○○株式社の方がお見えになります。
それから10時から……」
社長室まで歩きながら今日のスケジュールを言っていく。
社長は、一言も話さずに黙って聞いているだけだった。
いつもならちょっかいの一言やお尻を触るぐらいはあるのに黙っていると
何だか私の調子が狂ってしまう。
慣れって怖いわね。それが普通だと思うなんて……。