「そんなの嫌に……」
「あ、昨日みたいに気合いの入った服を着て来いよ?
もちろんキャンセルなんてしないよな?
契約書にも書いてあるんだから」
ちょっと……人の話を聞いてよ!?
まったく人の話を聞かない社長に呆れてため息を吐いた。
こうなった社長は、言うことを聞かない。
「くっ…承知しました」
私は、嫌々だが承諾をするしかなかった。
何故なら……契約書には、
『よほどの理由が無い限りは、守り無遅刻無欠席であること』と書かれているからだ。
こういう時だけは、覚えているのね?
普段は、書かせた張本人が守らないくせに。
どうしたらいいのだろうか。
「それは、会社のことですし……」
「これも会社の一環だ。はい、決まり。
じゃあ、明日だからな。忘れるなよ?夏希」
無理やり話を進められてしまった。
ちょっと、私の意見は!?
結局、最後までデートをすると言われて
聞く耳を持ってもらえなかった。
その夜。香奈子に電話をした。
昨日の謝罪とデートの事で、どうしても愚痴を聞いてほしかったからだ。
『いいじゃない。デートしてきなよ?』
「でも、それじゃあ…悪いし」
ここにも簡単に言う奴が……。
奥さんのことを気にすると胸がズキッと痛むのに
簡単に言わないでよ……。
『夏希は、彼氏が異性と食事をするだけでもアウトなタイプ?』
「えっ?時と場合によるけど仕事とか理由があるかも知れないし」