一体私は、何をしたかったのだろうか?
不倫の証拠を見つけるどころかお腹を痛めるなんて情けない。
 しかも迷惑までかけてしまった。

「気にするな。お腹の子が無事で良かったな」

 そう言い社長は、私の頭を撫でてくれた。
優しい手が何だか余計に胸を締め付けられそうになった。

「今日は、仕事を全てキャンセルをしてそばに居てやるから安心して寝ていろ」

「仕事を全てキャンセルって
でも、そんな事したら仕事に支障が……!?」

「そんなの、いくらでもカバーが出来る。
 それに妻が緊急事態なのに大人しく仕事なんかやってられるか。
まったく。とにかくお前は、安静にしろ!」

 ため息を吐くと強引に寝かされた。
秘書としても妻としても申し訳ない気持ちになったが何だか嬉しかった。
 私やお腹の子の事を1番に考えてくれていると思えたからだ。
いや。元々は、社長のせいでもあるのだけど……。

 結局。真相は分からずじまいだったが私は、それから
数日後に予定日より少し早めに男の子を出産した。
 子供は、身体が小さいため少しの間
保育器に入っていたが無事に退院が出来た。

「そうだ…名前は、結局どうなったのですか?」

「あぁ、色々悩んだ結果。棗にしようと思っている。
お前のなつを貰って棗だ!」

「棗か……いい名前ですね」

 どんな子に育つだろうか?
元気で、すくすく育ってくれたら嬉しい限りだ。
 まぁ社長みたいには、ならないでほしいけど……。

「よしよし。棗。たくさん飲んですくすく育てよ?」

 社長は、そう言いながら棗をあやしてくれた。
さすが…社長。慣れた手つきだ!
 姪っ子さんの面倒を見ていただけはある。

「社長……女の子ではなくて残念でしたね」