「ふ~ん。それより、夏希お腹空いた」
私は、無理やりな言い訳をすると社長は、食べ物をねだりだした。
あ、話を逸らした……。
「あ、はい。ただ今、準備を致します」
そう言うと慌てて逃げるように脱衣場から出た。
危ない…バレる所だったわ!!
他人様の携帯。例え恋人や夫であっても携帯を見るのは、よく無いと分かっている。
信用問題にも関わってくる事だし見たら見たで罪悪感だって生まれる。
でも、何故そこまでしてスマホを持ち歩くのか
分からないし、話を逸らすのもおかしい。
思っているそばから社長は、お風呂上がりに携帯のチェックをしていた。
そして何かを確認中。気になる…中身が。相手は、誰なの?
あまりにも気になるので食事の時に何気なく尋ねてみた。
「よくスマホをいじってますが
誰とやり取りをしていたんですか?」
「うん?栗本にスケジュールの確認を……。
それよりこの煮物旨いな」
「……そうですか。ありがとうございます」
そう言っておくが結婚して気づいた事があった。
社長は、何か隠し事があると話を逸らす癖がある。
今も逸らした!という事は、アレは…栗本さんではないって事ね?
なら、今の相手は…誰なの!?
私に言えないような相手……?
やっぱり怪しいわ。不倫の対象になりやすいのは、
社内の者やキャバ嬢などと言っていた。
そのどちらかなのだろうか?
その後も社長は、スマホを夢中で見ていた。
たまにそれを見ながらニヤニヤと笑っている日が続いた。
これは、きちんと一度確かめないと……。
私は、決意をすると臨月間近になるお腹を支えながら
会社に潜入するのを試みた。
カツラ被り、だて眼鏡をかけてみた。
これでバッチリね。私とバレないはずよ!