最近はめっきり暑くなって仕事に集中できない。雨も多いしやる気はほぼない。このご時世あまり長く仕事をすると会社側もうるさい。今日も就業時間ギリギリでようやく今日のノルマが終わった。基本的に仕事が遅い方でもないし、かといって速い方でもない。今年入ってきた5歳下の優秀な新人ちゃんの方が早いくらいだ。その子はもうすでに、自分のノルマを終え早々に退社している。何やら同棲している彼氏と久々に食事に行けるらしい。ウキウキしながら退社していった。一方の自分は去年別れてからというもの浮いた話もなく、女性の連絡先は高校時代の友人と母親くらい。まあこれはこれで充実してるし、働いたお金も自分のためだけに使うことができる。でも、将来が心配のため貯金はしている。今日もいつも通りスーパーで特売になっているお惣菜とお酒を買って家路に着く。外は雨が降っておりジメジメとした暑さが実に鬱陶しい。帰宅中、自宅付近の公園で見たことのある人間が雨に打たれていた。

「なんでここにいるんだ?傘ささないと風邪ひくぞ。」

その子は先に話していた新人だった。別にスルーしても良かったのだが、顔見知りでもあったし、あまりにも暗い雰囲気を醸し出していたので放っておくことが出来なかった。その子の顔はぐっちゃぐちゃで雨か涙かはわからないが目から黒い滴が垂れていた。

「先輩。」

落ち込んだ声で自分を呼ぶ。職場ではいつも元気な彼女とは違った感じだった。

「彼氏との食事はどうしたんだ?」

自分が問いかけると彼女は涙ごえで言った。

「家で話してたら彼の浮気が発覚して逆ギレされて追い出されました。いくあてもなくてここで座ってたら雨が降り出しちゃって。そこにたまたま先輩が。」

なるほど。話の内容は理解できた。

「で、これからどうするんだ?」

「どうしましょう。」

正直このまま放っておくのはできない。仕方なく自分が提案してみる。

「うちくるか?少しの間ならいいぞ。」

「いいんですか?迷惑じゃありませんか?」

「ここで泣かれているのも困るし、こんな状態ならしかたたいだろ。でも、男の一人暮らしだから女性ものは何一つないから自分で調達すること。財布は持ってるみたいだし、これから近くの店行くからそこで調達してくれ。」

「ありがとうございます。でも・・・。」

彼女は何か言いたげだったが、彼女の姿を見てそれはなんとなくわかった。薄着で雨に打たれていたため下着が少し透けて恥ずかしいのだろう。正直目のやり場に困っていたので仕方なく自分が今羽織っているジャケットを彼女に貸す事にした。

「これかしてやるから早く行こう。雨も強くなりそうだし。そうだ、汗臭いのは我慢してくれよ。頑張って働いた証拠なんだから。」

「いいえ。いい匂いです、先輩。ありがとうございます。」

こうして、部下との短い同棲生活が始まった。