「若……お疲れ様でした。
 それでどうなったんですか?お話の方は?」と聞いてきた。
 すると鬼龍院さんの表情が変わった。

「重勝さん、至急幹部達を集めろ。大切な話がある」

 私をギュッと抱き締めたままそう伝えた。
重勝さんは、返事をするとすぐに周りに指示を出した。
 その姿を見て何だか大変なことが起きそうな雰囲気で不安になってきた。

 しばらくして幹部の人達が大広間に集められた。
さすがヤクザの幹部って言われているだけのことはある。
 どの人も迫力と怖そうな雰囲気の人ばかりだった。
鬼龍院さんは、奥の上座の席に座った。
 キリッとしている姿は、若頭モードで、さっきまでの、か弱い雰囲気がまったくない。

「皆に集まってもらったのは、他でもない
最近無断で出回っている麻薬の出所と販売のことだ。
 知っての通り……我々鬼龍院組の名を名乗り、大量の麻薬が民間に出回り金儲けをしているらしい」

 ピリッとした雰囲気は、まるでドラマや映画の極道のワンシーンを見ているようだ。
 リアルに見ると迫力があり過ぎて怖い……。
私は、近くに居ても本当にいいのだろうか?
 明らかに私は、場違いのような気がする……。

「若。これは、鬼龍院組に対する侮辱ですぜ。
 早く取っ捕まえて濡れ衣を晴らし、痛め付けないと我々の名誉が傷つく」

「そうだ。こんな濡れ衣してきた野郎を許せる訳がねぇ。
 見つけ次第ボコボコにぶち殺してやりましょう」

幹部の人達は、かなり苛立っていた。
 異様で今にも争い事が起きそうな空気に私は、ただ恐怖を覚える。手がガタガタと震えてきた。
 すると鬼龍院さんは、ハァッとため息を吐いた。
そして1枚の紙を重勝さんに渡した。

「そう慌てるな。すでに目星は分かっている。
 これは、警察から頂戴した極秘書類だ!
そこに犯人は、伊崎組の名が入っていた」

「伊崎組だ!?」

 その名を聞いた幹部達は、ざわつきだした。
えっ?伊崎って誰?
 そんなざわつくような人達なの?
何も知らない私は、おろおろしながら聞いていた。
 すると重勝さんがこっそりと教えてくれた。

「伊崎組は、我々鬼龍院組に反する組織です。
 やり方も全く違い暴力、恐喝や犯罪にも手を染めていています。
 その上……極道界のトップを狙っており我々鬼龍院組を邪魔のように思っている連中ですよ!」

 犯罪にも手を染めている!?
そんな危ない連中が他にも居るの?
 そんなのを野放しにしていたら危険じゃない。
だったら早く捕まえなくちゃあ……。
 私は、悶々としていると幹部も同じ気持ちだったらしい。