「幸也さん、来ました!
 鬼龍院の若頭がこちらに来ました」

 鬼龍院さんが……!?
本当に……助けに来てくれた。
 嬉しかったがすぐに自分の立場に気づく。
ダメよ……このままだと!!

 私を人質にして向かってきたら鬼龍院さんの身が危なくなるわ。
 どうにかして鬼龍院さんに知らせないと……。
私は、必死に固く結ばれた両手の紐を取ろうとした。
 くっ……なかなか取れない。
力を入れるたびに食い込み痛いだけだった。

「さて……ナイト様のお出ましかな?
 フフッ……おい、彼女を丁重に連れて行け」

 大河内って人は、そう指示を出すと部下達は、私を無理やり立たせて連れて行こうとした。
 抵抗しようとするが力が強くて敵わず連行されることに。

 蛍光灯がぼんやりと電灯している広い倉庫に鬼龍院さんは、1人立っていた。
 急いで来たのだろうか……息を切らしていた。

「鬼龍院さん」と私は、叫ぼうとしたら部下の手で口を塞がれる。
余計なことを喋らせないようにしたいのだろう。

「約束通りに1人で来た。上紗さんを帰してもらおう……」

「そう慌てるなよ……鬼龍院葵さん。
 せっかくなんだし取り引きをしようじゃないか……?」

その言葉に顔を歪ませる鬼龍院さんだった。
 絶対に罠よ!?取り引きとか言いながら、どうせ隙をついて命を狙う気なんだわ。

「取り引きだと……?」

「そう……心配するな。正当な取り引きだ。
 ここでは話せないから、ちょっと鬼龍院さん1人で来てもらおうか?」

「彼女は……?」

「君が受けるのなら、きちんとここで帰す。
 どうせ後で君の部下達も来るのだろう?
その部下達に送らせればいい……どうだ?悪い取り引きではないだろう?」