「そ、そんなことしても来る訳がないじゃない。
私は、別に婚約者じゃないもの。
ただお見合いをしただけで、すでに断られているし」
「婚約者……じゃない?」
「えぇ……残念ながら。私は、ただの一般人よ!
そもそもヤクザとか大嫌いだし、関わりたくもないわ」
私は、必死に言い訳した。
せめて私が使えない人間だと見せないと……。
それにヤクザが嫌いだったのは本当だ。
鬼龍院さんに会わなかったらヤクザのことなんて興味なんてなかったし、関わろうとも思わなかった。
全ては、鬼龍院さんに会って始まったことだ。
こんなに好きになったことも……。
しかし大河内って人は、それを聞いて笑い出した。
「アハハッ……君は、面白いね?
じゃあ……これは、なんだろうね?」
そう言いながら自分の背広のポケットから1枚の写真を見せてきた。
その写真は、この間ショッピングモールでデートした時のものだった。
しかも2人で仲良く猫カフェに行ったところだ。
いつこんな写真を撮られていたのかしら?
しかしこれでは……誤魔化しきれない。
「どうしてそれを……?」
「俺の家は、情報屋でもあるから知り合いが多くてね。
鬼龍院のことを調べたら君の情報を詳しく教えてくれたよ!
凄いじゃないか……あの鬼龍院に惚れさせるなんてさ」
つまり全てお見通しってこと!?
だとしたら、なおさら私を人質にしたら鬼龍院さんが来ることも全て計算済みってことになる。そんな……。
私は、絶望する。自分のせいで鬼龍院さんが死ぬなんて嫌だ。
だからと言って非力な自分ではどうすることも出来ない。そんなの……悔しい。
「あなたは、恥ずかしくないの!?
こんな卑怯なやり方をして……それでも男?」
「てめぇ……幸也さんになんて無礼を」
部下の男に掴まれそうになる。
しかし大河内って人が左手を出して止めてきた。
まさか止めてくれるとは思わなかったから驚いた。
「やめろ。非力な女に手を挙げるな。
それに俺の目的は、あくまでも……」
大河内って人が、何かを言いかけた時だった。
別の部下が慌ててこちらに来た。