その後。坂下君の言い分は、まったく理解出来なかった。
結局納得して貰えないまま文化祭の準備だけは、順調に進んで行った。
メイド服も生徒達の強引な後押しで着ることになってしまったし……トホホ。
今日もいつものように文化祭のためにクラスで飾り付けなどを準備していた。
しかし、そこに坂下君の姿は見当たらない。
「椎名先生。これどうしたらいいの?」
「ちょっと待ってて。ねぇ坂下君は?」
「知らなーい。どうせサボりじゃない?
いつもそうだし……アイツ」
サボりって……。
女子生徒の返答に呆れてしまった。
相変わらずサボってばかりね……あの子は。
少しは、手伝ったりすれば他の子達とのコミュニケーションがとれるのに……。
坂下君は、一匹狼なところがあり仲間で戯れることを酷く嫌う。
根はいい子だと思うだけに気にかけてしまう。
しかし彼の行動がのちに大変なことになってしまうのは、その時の私は知らなかった。
坂下君は、私のこともあり酷く荒れていた。
そして通りすがりの不良達と喧嘩をしてしまう。
相手をボコボコにしてしまい……。
「アイツ……許せねぇー」
「おい。これ……アイツ。
海王の生徒だぜ?しかもこれ……文化祭のチケット」
不良達は、文化祭のチケットを見るなりニヤリと笑った。
その笑みは、何かを企んでいるような笑い方だった。
しかし、それを知らない私達は、1ヶ月経ち文化祭当日を迎えることになった。
いつもより賑わう校舎の中。
校庭やクラスには、生徒が考えた出店や出し物。
いろんな物で溢れかえっていた。
父兄やチケットを持って来た他校の生徒。そして一般客。
こんな大勢見ている前で、これを着るのか……。
「ちょっ……椎名先生。ちょー似合う!!」