私は、慌ててその話を承諾した。
断る理由が思いつかなかった。だって……。
学校で、その事について話をしたばかりだし。
すると鬼龍院さんは、安心したような声で……。
『良かった……この前のリベンジさせて下さい。
素敵なレストランを予約してあるんです。
ロイヤル東京ホテルなんですが……』
ロイヤル東京ホテル!?
そこは、東京でも有名な高級ホテルだ。
しかもディナー……まさか!!
思わずその後のことを想像してしまった。
鬼龍院さんのそのつもりで……?
『上紗さん?』
「は、はい。大丈夫です!
心の準備をしておきますから」
『心の準備……?』
だが、すぐにハッとした。
何を言っているのよ?私ったら……。
しかも自分から心の準備だなんて言っているし。
「あの……何でもありません。楽しみにしています」
私は、慌てて言い直した。
危うく自分から期待しているように思われるところだった。恥ずかしい……。
すると鬼龍院さんは、クスッと笑った。
「僕も楽しみにしています」
心地のいいトーンで話す鬼龍院さんの声。
きっと頬を染めながら笑顔になっているのかもしれない。
そう想像すると胸がドキッと大きく高鳴った。
やっぱり断る理由を見つけられなかった……。
どうしよう。奈緒に話したら行けと言うに決まっているし、でも……ヤクザだし
自分でも決めかねて散々悩んでしまった。
その後も散々悩んだ。
しかし時間は、待ってはくれない。
悩んでいる間に日曜日の日を迎えてしまった。
断ろうと思えば断れるはずなのにそうしないのは、やっぱり何処か期待をしてしまうからだろうか。
鬼龍院さんの関係に……。
私は、高級ホテルであるロイヤル東京ホテルのロビーで待ち合わせをした。
待っている間に手鏡で格好やメイクを確認する。
深紅のミニワンピースにした。
派手なような気がしたが鬼龍院さんと一緒にディナーをするなら、これぐらい派手じゃないと……。
周りに釣り合わないと思われたら嫌だもの。