でもこのままだと認めてくれないだろう。
そんなこと絶対にさせない。
 私は、私の意地があるんだから……。

「私は……教師は、辞めません。
 でも鬼龍院さんも大切だし、一緒に居たい。
覚悟ならあります。絶対に鬼龍院さんを……葵さんを守ってみせます。絶対に後悔はさせません!!」

 無茶苦茶な事を言っているのかもしれない。
だけど教師の仕事も大切だ。
 だから許してもらうためにも諦めたりしない。
すると鬼龍院さんが立ち上がった。鬼龍院……さん?
私は、驚いて彼を見た。

「僕……いや俺も諦めるつもりはない。
 彼女がやりたいようにさせるし、邪魔をする者が居るのなら俺がその度に始末をつける。
 例えそれが父親だとしてもだ。行くよ……上紗さん」

 キレた時の鬼龍院さんだった。
私の腕を掴むと大広間から出て行ってしまった。
 お父様とお母様は、黙ってそれを見ていた。
廊下に出るが鬼龍院さんは、無言のまま歩き出した。

このままで本当にいいのだろうか?
 認めてもらうどころかこのままだと破談にさせられてしまう。そうなると大変なことになる。
 それに結婚するなら家族として見てもらいたい。
そう……私は思った。

「あ、あの……いいんですか?
お父様とちゃんと話をされなくても……」

「……あんな父を初めて見たよ。
 普段の父は、僕に優しかったから。
でも……上紗さんとの結婚を認めないなら仕方がない。
 強引にやるしか……」

 しゅんと落ち込んだように話す鬼龍院さん。
本当は、認めて欲しかったのだろう。
 それに普段鬼龍院さんには、優しいのかと驚いたが、それだけ大切に想っているのだろう。
 なら……認めてもらいたいし、そのままにしておくのは良くない。私がどうにかしないと……。

「だったらもう一度話し合いをしましょう!?
 何度でも頭を下げて。私……もう一度話をつけてきます。
このまま中途半端で終わるだなんて嫌ですから」

 ひときわ負けず嫌いで勝ち気な自分だ。
このまま終わりにするなんて自分のプライドが許さない。
 ダメだと言うのなら……意地でも認めてさせてやる!!

「えっ?上紗さん!?」

「鬼龍院さんは、そこで待ってて下さい!!」

 私は、勢いでその場を後にして大広間に戻った。
もう一度話し合いをするために。
 組長に喧嘩を売るような勢いだった。