「あ、葵ちゃん!!どう?
ちゃんと上手く進んでる~?
ムードも大切だから葵ちゃんしっかりね」
電話は、鬼龍院さんのお母様で、どうやら私達を心配して電話してきたらしい。
というか、心配なのは分かりますが、ムードが大切だと思うのならこんな時に電話して来ないで下さいよ!!
私は、心の中で思いっきりそうツッコんだ。
お陰でムードも台無しだ。
すっかりいい雰囲気が壊れてしまった……。
その後もやり方がどうとか私の時は……と言い出してしまい完全に削がれてしまった。
鬼龍院さんと顔を見合わせると苦笑いした。
まぁ……仕方がないかと思いながら
結局何もないまま終わってしまったが前よりも距離が縮んだように感じた。
お互いに抱き締めるように眠った……。
その後。私達は、正式にお母様に認めてもらえた。
しかし喜んでいたが、肝心な事を忘れていた。
まだ鬼龍院さんのお父様の挨拶が残っていた。
彼のお父様ってことは、鬼龍院組の組長。
日本の極道を束ねるお頭。一体どんな人なのだろうか?
鬼龍院さんの影響でイメージが緩くなってはいるが、本来なら恐ろしい世界なのだ。
もし怖い人だったらどうしよう……。
改めて家に呼ばれた。海外に行っていたお父様も婚約を聞いて戻って来てくれたらしい。
私を会うために……うぅっ……緊張する。
「大丈夫ですか?顔色が悪いですが……」
「だ、大丈夫です……緊張していますが何とか乗り気って見せます!」
私は、グッと意気込んだ。
反対されないためにもきちんとやりたい。
それに話し合って練習だってした。大丈夫……きっと。
「では、行きましょうか?」
「はい……」
私達は、大広間に向かった。
今日は、着物を着ているためお腹が苦しい。
ピシッと背筋が伸びるようだ。
大広間まで来ると深く呼吸を整える。
「失礼します」と言い中に入ると思わず息を飲むような緊張感が走った。
奥に鬼龍院さんのお母様とお父様が座っていた。
あれが……鬼龍院組の組長!?
雰囲気は、鬼龍院さんに似ているが、明らかに別人のよう厳格な雰囲気があった。
キリッとしてものを言わせないような鋭い目付きに年を重ね落ち着いた黒いオーラ。
そう……キレた時の鬼龍院さんを思い出した。