鬼龍院さんみたいな極道からしたら、刺青を彫らないのは、恥ずかしいことなのかもしれない。
 しかし一般人の私達には、その方が助かる……。

 刺青が彫ってあるとプールとか温泉とか入れないところもあるし。
 何より周りの人がビビってしまうから。

「大丈夫ですよ。私は、気にしませんから」

「でも……カッコ悪いし……」

 鬼龍院さんは、恥ずかしそうにモジモジしながら言ってくる。
 ウルウルした目で私を見る姿は、何とも可憐で儚いのだろうか……。私は、この顔に弱い。
 思わず鬼龍院さんをギュッと真っ正面から抱き締めてしまった。

「上紗さん……!?」

 私は、ニコッと笑うと鬼龍院さんの唇にキスをした。
もう恥ずかしさより愛らしい彼を慰めたくて仕方がなかった。
 本当……どちらが男女か分からない。

 すると鬼龍院さんも最初は、驚いていたが
そのキスに応えてくれるようになる。
 お互いに触れるようなキスから深いキスをする。
勢いでベッドに押し倒されてしまった。
 これでいい……。
そう思いながらお互いにまた唇を重ねた……。

 すると何処からか電話の着信音が聴こえてきた。
こんな時に……誰よ?いいや。無視、無視。
そのまま続けようとする。
 鬼龍院さんは、気づいていないのか自分からバスローブを脱いだ。
 あぁ……なんてたくましい身体なの。

細いのに無駄のない鍛えられた身体。
 男の人のから身体だ。目をウルウルさせながら頬を染めて私を見る表情は、妙に色っぽい。
 いや。むしろ……天使の妖艶な美しさだ。

 この表情を大河内幸也が見たのかと思うと腹が立つが今は、私だけのもの……。
 手を伸ばして、もう一度キスをしてもらおうとしたら、また着信音が鳴った。

 一度だけではない。何度も……。
さすがにしつこいでしょ!?これは……。
 イライラしてしまいムードどころではない。
お互いに気になってしまい……仕方がなく鬼龍院さんがスマホを取った。
 どうやら鬼龍院さんのスマホからだった。

「あ、母さんからだ!」

 はぁっ!?お母様!!
驚く私に鬼龍院さんは、スマホをスピーカーにしてくれた。

「もしもし?母さん?」