「おじゃまします」
晴海家の玄関に入り、まずは一言。
「どうぞ」
太鳳くんのやさしい声が迎えてくれる。
「俺の部屋に行こう」
太鳳くんはそう言い。
私と太鳳くんは太鳳くんの部屋へ。
「少しでも水分を拭き取った方がいい」
太鳳くんの部屋に入り。
太鳳くんはすぐにタオルを渡してくれた。
「ありがとう」
タオルを受け取り。
濡れた髪などを丁寧に拭き取る。
やさしい匂い。
髪を拭くときに。
ふわっと包み込むように香るタオル。
それは。
まるで太鳳くんの優しさに包み込まれているような。
それを感じると。
私も優しい気持ちになることができる。
「彩音、俺の服で申し訳ないけど
着替えた方がいい」
太鳳くんはそう言うと。
上下の着替えを渡してくれた。
「太鳳くん、それはさすがに悪いよ」
タオルはともかく。
上下の着替えなんて、いくらなんでも……。
「悪くなんかないよ。
濡れた制服を着ていると風邪をひかないか心配だから。
……それに……」
……?
それに……?