紫音の寝顔を見つめながら、凰理は利都から連絡を受ける前まで詩音とやりとりしていたことを思い出す。

※ ※ ※

「凰理ってロリコンだったの?」

「はっ?」

 突然、話があると凰理の研究室に現れた詩音は、突拍子もない発言を繰り出した。唖然とする凰理に詩音は首を傾げる。

「だって紫音ちゃんとしばらく交流はなかったんでしょ?」

「なんでここにあいつが出てくるんだ」

 眉間に皺を寄せる凰理だが、詩音はものともしない。わざと胸の前で腕を組んで大袈裟に肩をすくめた。

「よく言うわよ。人のこと、ずっと代わりにしていたくせに」

 さすがの凰理もすぐに言葉が出ない。ただ詩音に訝しげな視線を送るだけだ。詩音は堂々と凰理と目を合わせ強気に話を進めていく。

「ずっと不思議だったの。名前さえ認識していないような私からの告白を、どうして凰理は受けてくれたんだろうって。凰理はどちらかというと彼女は面倒だって思っている節があったでしょ?」

 当時の凰理は、その見た目もあって性別問わず一目置かれる存在だった。女性からの告白は日常茶飯事で、それを適当にあしらう場面を詩音は遠巻きに何度か目撃している。

 詩音もそういった女性のひとりになるだろうと覚悟していた。ただ認識されていないよりはマシだ。

 どうせ正面から受け取ってもらえないなら、あれこれ考えず軽い気持ちで自分の想いを口にするのも、いい経験になるかもしれない。