紫音は目の前のティースタンドを上から順番に目をキラキラさせながらじっくりと眺めていく。

 三段に分かれ、それぞれの白い皿には店自慢のこだわりのスイーツが盛り付けられていた。

 一段目は自家製アイスクリームと柚子のソルベ、ブルーベリーと苺のムースがそれぞれ小さな器に盛られて中央を陣取り、その周りにガトーショコラ、チーズケーキ、シブースト、マカロンなどがバランスよく並べられている。

 二段目はスコーンが二種類とシュークリーム、彩りにフルーツが添えられていた。

 一見、バニラアイスと勘違いしそうな小さな球体はクロテッドクリームだ。スコーンに用意されたもので、隣には定番のジャムももちろんセットされている。

 一番下の三段目は、ミニサンドイッチやキッシュやバゲット、野菜のマリネなど甘くない軽食が陣取っていた。

 ひとりで食べるには多そうに感じるが、このテーブルにはふたりいる。

「これは……昼飯なのか?」

 うっとりとした眼差しでティースタンドを見つめる紫音に、真正面に座った凰理が聞いた。紫音は凰理にまったく視線を寄越さずに大きく頷く。

「うん」

 紫音が凰理に行きたい場所として提案したのは、英国風のクラシックスタイルのカフェだった。

 目当ては今、紫音の目の前にあるアフタヌーン・ティーセットだ。

 本来ならその名の通り食後のティータイムにでも訪れるのが理想かもしれないが、人気店ゆえに混んでいたり、品切れの可能性がある。