そのとき落雷の大きな音とともに、突然篠突く雨になる。地鳴りを思わせるかのような激しい雷雨に、空は真っ暗だ。予兆があったものの世界が一転する。
「シーツ!」
思い出して紫音が叫ぶ。マンションのバルコニーにシーツを干している。一応、屋根はあるがこの天気ならほぼ意味がない。
からっとしたお日様のいい匂いを想像して干したのに、実際は水分を含んだじめっとしたシーツが出来上がっていると思うと、げんなりと項垂れざるをえない。
こんなことなら、むしろ干すんじゃなかった。
朝の爽快な気分はなんだったのか。たしかにネットの天気予報で『ところにより一時雷を伴う激しい雨が……』という文を目にしたが、そこまで重く受け取っていなかった。
落ち込んでいると、再び窓の外が光り耳をつんざくような音が木霊する。かなり近い距離で雷が落ちたらしい。
さすがに驚いて呆然としていると声が降ってきた。
「怖いのか?」
「……生憎、全然怖くない」
紫音は余裕たっぷりに言い返す。その言葉に嘘はない。
『魔王に立ち向かう勇者様なら、怖いものなんてなにもないですよね?』
そう、怖くない。怖いものなんてあってはいけないんだ。
無意識に自分に言い聞かせる形になり、自然と体に力が入る。すると前触れもなく電気が消えた。
部屋の中だけではない。廊下も外も、一瞬にして世界が闇に包まれる。停電だ。
「シーツ!」
思い出して紫音が叫ぶ。マンションのバルコニーにシーツを干している。一応、屋根はあるがこの天気ならほぼ意味がない。
からっとしたお日様のいい匂いを想像して干したのに、実際は水分を含んだじめっとしたシーツが出来上がっていると思うと、げんなりと項垂れざるをえない。
こんなことなら、むしろ干すんじゃなかった。
朝の爽快な気分はなんだったのか。たしかにネットの天気予報で『ところにより一時雷を伴う激しい雨が……』という文を目にしたが、そこまで重く受け取っていなかった。
落ち込んでいると、再び窓の外が光り耳をつんざくような音が木霊する。かなり近い距離で雷が落ちたらしい。
さすがに驚いて呆然としていると声が降ってきた。
「怖いのか?」
「……生憎、全然怖くない」
紫音は余裕たっぷりに言い返す。その言葉に嘘はない。
『魔王に立ち向かう勇者様なら、怖いものなんてなにもないですよね?』
そう、怖くない。怖いものなんてあってはいけないんだ。
無意識に自分に言い聞かせる形になり、自然と体に力が入る。すると前触れもなく電気が消えた。
部屋の中だけではない。廊下も外も、一瞬にして世界が闇に包まれる。停電だ。