「うん?」


 私の呼びかけに拓生くんは振り向いて、やさしく返事をしてくれた。

 そんな拓生くんに私は、いつものようにこう言う。


「また学校でね」


 と。


「ああ、また学校でな」


 拓生くんもいつもの笑顔でそう言ってくれた。

 そんな拓生くんのことを見て、私は胸の奥がズキンと痛んだ。

 だって。
 拓生くん、本当は笑顔でいられる状態ではないはずなのに。


 そして拓生くんは、いつもの笑顔を見せてくれた後、再び歩き出した。

 そんな拓生くんを私と一輝くんは静かに見送った。